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経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)について

経カテーテル的大動脈弁置換術(Transcatheter aortic valve implantation;TAVI)

 

大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis : AS)は、心臓の出口のドアの役割をしている大動脈弁が変性・硬化することで弁の開放が制限され、心臓に負担がかかる病気です。一般的に進行性で弁狭窄が心機能の限界を超えたところで、運動時の息切れ、胸痛などの自覚症状が出現します。最終的には心不全に至り、未治療の場合の生命予後は極めて不良であることがわかっています。これまで、開胸・人工心肺を使用した大動脈弁置換術(Aortic valve replacement : AVR)が標準治療とされてきましたが、年齢や全身状態、併存疾患を考慮した場合に従来の手術では治療が困難(体力的に手術を乗り越えることが難しい)と判断され、有効な治療を受けられなかった患者さん達がいました。

 

TAVI治療は、胸骨を切らず、人工心肺を使用せず、足の付け根や胸の小さな傷からカテーテルを用いて自己の大動脈弁の内側に人工弁を植え込む、非常に低侵襲な治療です(図1)。2002年フランスにおける生体内初留置以来、これまでに世界中で約30万例のTAVIが実施されています。日本でも2013年の医事承認後、全国の認定施設で実施されており、欧米を上回る優れた治療成績が報告されています。当院においても、2017年にハイブリッド手術室稼働後にTAVI施設認定を取得し、循環器内科と心臓血管外科、麻酔科や臨床工学技士、看護師や放射線技師などのコメディカルがハートチームを組んでTAVI治療を行っております。これまで当院でTAVI受けられた患者さん達は皆さん留置に成功し、大きな合併症を残すことなく、順調に退院されております。手術後の体力低下が少なく、スムーズに自宅での生活復帰が期待できる本治療は、従来の開胸手術が困難な患者さん達にとって画期的な先端治療であると言えるでしょう。

図1;TAVI

現在、TAVI治療対象は、1)弁尖硬化による大動脈弁狭窄症があり、2)従来型の開胸手術を受けることが難しい(ハイリスクな)患者さんに限定されております(血液維持透析を要する慢性腎不全の場合は、保険適応外です)。

手術ハイリスクの定義は、一般的に、1)80歳台以降の高齢者で、2)介護サポートを要する体力低下(フレイル)を伴う場合、3)肝硬変、血液疾患、脳血管障害、リウマチ疾患などの慢性疾患を有する場合や、4)以前に心臓手術を受けている場合などが該当します。TAVI治療は、従来の大動脈弁置換術と比較し体への負担が少なく、近年の研究では術後早期および中期(数年まで)の良好な治療成績が報告されています。一方で術後遠隔期(10年以上)の治療成績が不明であり、TAVI留置には解剖学的な留置制限(大動脈弁の形や大きさなどによります)が存在することなど、今後の改善の余地を残す新しい治療でもあります。

当院における大動脈弁疾患治療においては、TAVIやMICS(低侵襲大動脈弁置換術)手術、従来型大動脈弁置換術(胸骨正中切開)の選択肢の中から、それぞれの患者さんに最適と思われる治療法を提案させていただいております。

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